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他人事の長文置き場です。

MONSTER MATES 感想(ネタバレ)

ソフィ・カルという現代芸術家が好きだ。

初めて見た時は竦む程の感動を覚えた。

あれは忘れもしない…と書き出そうとして、早速いつぐらいの時期だったのかすっかり忘れているので、私ってやつは…とうんざりするのだけど、兎に角今より幾つかは若かった私は、ソフィ・カル個展開催期間の最終日。

美術館の閉館40分程前にそんな事とは露知らずに足を踏み入れた。 後天的に盲目になってしまった人達が、視界を失う直前に見た風景をソフィ・カルがインタビューし、当人とその風景を写真に収めたものと、海のない貧しい国に住む人々が初めて海を見た瞬間の写真と動画が展示されていて、閉館間際なせいで人が殆どいなくなった美術館で、時間がないという状況も相まってか自分でも前代未聞な程の集中力で作品を眺めることが出来た。 特に私が感銘を受けたのは生まれて初めて海を見る人々の姿で、大海原を前に微動だにせず、声もあげず波の音をバックに静かに一筋頬に涙で濡らす女性の姿とか、初めはおっかなびっくり打ち寄せる波を眺めて竦んでいるのに、あっという間に慣れて、浜辺を駆け回り波とおっかけっこし始める子供らの姿を、動画の前にしゃがみ込んだりしながらじっと眺めていた。

その時の時間については、現実感が余りにもなさすぎて、今でも夢みたいだったなぁなんてぼんやりする。

余りに、その時自分がいた場所が綺麗過ぎて。 一瞬でも、この世界にいられる事に感極まっていた。

原美術館、一階フロア。 一番奥まった場所にある白い小部屋に置かれた小さなテレビ。 テレビの向こうには大きな窓があって、灰色の空と、芝生や生垣の緑が霞んで見えていた。 小さなテレビの画面には、波と遊ぶ子供達が映し出されていて、そのはしゃぐ声と雨の音をずっと聞いていたいと、結構切実に私は願っていた。

これは、私の多分一生忘れないだろうと思う、大事な芸術体験の一つ。

今、惜しくも閉館が決まっている原美術館にて、ソフィ・カルの企画展が行われており、少し前に足を運んだのだが、今回は以前感じたエモーショナルな感傷を吹き飛ばすほどのエグミの強い衝撃を受けた。 端的に説明すれば、耐え難い悲しみに見舞われたソフィ・カルが他人の不幸体験を収集し、その不幸と比較するかのように自身の悲しみの追憶を繰り返して、「不幸セラピー」ともいえるやり方で自身を癒した試みを展示してあったのだ。

「極限性激痛」という個展は、様々な不幸が「芸術」として展示されているというエグさを含めて、人間の業の局地を見せつけられた気がした。

主語をでかくすると、色々と差し障りがある時代だが、あえて大きな主語を使えば「私達人間は他人の不幸で癒される生き物」であると言ってしまいたい。

もしくは、「他人の不幸を教訓に、自身の襟を正そうとする」生き物であるとも。

自分は他人の不幸を糧にしてしまえるという生き物であるという気付きは、思い出す度に私に苦虫を噛み潰したような顔をさせてくれる。 そして、自身の不幸が誰かの糧になるかもしれないという諦念も覚えさせるのだ。

事ほどかように、自分自身に気付きを与えてくれるソフィ・カルを愛してやまない私がですね、MMを愛さないはずがないわけで。

 

って事で、ソフィ・カル最高刺さるから、マジで一回展覧会とか行ってみて!の気持ちを、極限まで薄く引き延ばして書いた長文前置き、ほんと申し訳ねぇ! 申し訳ねぇ!

こっからMONSTER MATES略してMMの感想になりますよ~と、AVの導入部の如く、前置き読み飛ばしてた人達に大声で呼びかけたい私がおるのだが、いや、もう、なんかほんと、相当に面白かったので阿呆のように「おもしろかったです」とかひらがなボイスで述べて感想を終えたいような気もしているのだ。

だってそうじゃない?

そういう芝居ですよ、これ。 エンタメで、観客をめい一杯楽しませる事に腐心している正しい演劇。 だから、なんか、長文で一杯考察したり、したり顔で裏を読んだようなことを書くのも、気恥ずかしいような気がして、でもまぁ、書きたいから書くし、長文は長文だし、私の顔はずっとしたり顔だよ!

個人の感想であることを踏まえて、半笑いで読んで貰えるのが、ちょうどいい塩梅なので、そういう感じでお願いします。

あと、ネタバレしかない感想なので、未見で映像化した際には見るよ!という人も、これネタバレせずに見た方が面白い作品なので映像見てから読んでくれ! 頼むよ!

 

というわけで、あのねぇ、侮ってた! こんなに面白いものがピロティホールで待ち受けてるだなんて想像すらしてなかった。 何しろ、私は今回舞台の出演者である青柳翔が所属する劇団EXILEの劇団員・町田・とてつもなく顔がいい・啓太を推すオンナであり、一緒に舞台を観に行ってくれたのはその劇団EXILEが所属するLDH事務所の別グループSECOND所属の黒木啓司を推すオンナであったわけで、まぁ、ややこしいんだけど本命の推しは別にいるけど、青柳さんの芝居が好きだから、チケット取ったよ!な二人組で観に行きました!って事で正解なわけなのです。

そこんとこ、マジでよろしくな!

故に、観劇前は緊張感の欠片もなく、劇場近くの果物が美味しいカフェにて、日替わりパスタのボロネーゼを啜り、セットのマンゴージュースを「美味しい! 美味しいの天才!」とか言い合いながら飲み、二人共通の推し劇団である新感線を観劇する前とは雲泥の差の緩んだ顔をしながら「青柳さん、かっこいいといいですなぁ」「楽しいお芝居だと嬉しいですなぁ」みたいな事を言い合っておったわけです。 それから、数時間後には鼻からマンゴージュースが全部出てきそうな目に遭っているとも知らずに…(不穏なBGM)

 

大体、アレや。 私確信を得ているのだけども、これ観た青柳翔推しの人間、実はもう死んでるんじゃないの? そう、青柳翔を推すあなた!! あなたの話をしてるのですよ?

あんな青柳さんみて、何で自分は自立呼吸が出来てるのかな?って不思議に思ってるでしょうが、多分、あなたはもう死んでるのです。 もしくは、あなたは先天的不老不死者で、劇場で死んで永遠の命を生きる事になってしまっているのです。 それほどまでに、あんなもん、必殺! 青柳翔だわ。 必ず殺す青柳翔だわ。 本命で無いにも関わらず、私もう少し前方列で観てたら、心肺停止してたろう自信があるもの。 二回観たけど、最後列と最後列付近で観た事で命を拾った実感があるもの。

もうねぇ、まず足が長い!!(子供の声で) 足の長さ梅田のツインタワーか!(大阪のご当地ネタを入れてみつつ) あんな足が長くて、顔が小さい癖に、更に精神科医な青柳さんとか、戸次さんは私達をどうしたいの? 私達がナックスに対してどんな罪を犯したっていうの? キャラメイクのえげつなさが、青柳翔famをデストロイしてやるぜ!欲に満ち満ち過ぎてない? 大丈夫?

ていうか、MMに関して言えば登場人物全員famジェノサイドキャラクターに成り得ていて、これ一人でも推しがいたら殺される芝居や…と、脇の下を冷たい汗でびっちゃびちゃにせざるを得なかったよね。

お話の筋も、相当に面白くて不老不死者の設定と、あの結末思いついた時点で戸次さん勝利確定だし、このキャスト揃えたんだからそりゃ大勝利だよなぁ…としみじみした。 うまい、うまい。 物語の緩急や、ラストにて怒涛の展開が畳み掛けてくるような速度までうまい。 これ、岸田戯曲賞狙えるね!とか、目指せ!読売演劇賞!みたいな、そういう類の舞台ではないのだけども、そういう類でない芝居こそが観客の需要が最もある芝居なのです!ということを分かりつくしているような物語ラインで、頭から爪先まで観客の方を向いている私の大好きな類の舞台でした。

行ってよかったなぁ。 青柳さんが出てなきゃ行ってなかったもんなぁ。 だから、青柳さんに感謝しかないなぁ。

 

まずね、本郷君の感想書くけど、35歳には見えないっていうか、実年齢の28歳にすら見えない幼い容姿なのが大変良かった。 屑に飼われる屑の役。 でも、私も黒木啓司のオンナ曰く股下5mもある青柳翔に飼われて蔑まれながら働かない人生とか大絶賛送りたいし、自立したいとかも微塵も思わないので、私の方が屑なんだぜ☆とか、親指立ててウィンク決めつつ三波は、多分自身が屑である事を自覚し、その屑な状況から脱出しようと足掻く様が、坂上のお気に至く召していたのだろうなあとも察してるわけで。

自身の境遇に満足するような人間ではいけなかった。 与えられ、囲われ、飼い殺される環境に罪悪感と自己嫌悪を覚えるような人間こそが、坂上の自尊心を満足させる事が出来たと考えると、冒頭坂上の部屋を苛立たしげに綺麗に掃除している姿も納得出来るわけで。 何かしら、多少なりとも坂上の役に立つことで、自分があの部屋にいる為の理由が欲しい三波に型の古いコードもろくすっぽ巻き上げてくれないような掃除機をあてがってる坂上の歪みが鏡あわせみたいに浮かび上がってきて、つくづくお互いがお互いの姿を映すように出来上がってる絶妙なキャラクターよね、三波と坂上って…と唸る他ないのです。 ほんと戸次さん性格が悪い!>褒めてる

プライドは持ち合わせてるけど、プライドが折れないでいようとする努力は続かない。 口ばかりは目標や、将来の希望を立派に述べるけど、言い訳ばかりで行動が伴わない。 結果厭世的になって、障害を言い訳に世を拗ねている三波は自他共に認める屑の見本のような人物造詣をしていて同時に、誰だって彼のようにもなり得るよなぁって思わずにはいられないのでした。

 

果たして、彼の性質が屑だったのか? 彼の環境が彼を屑にしたのか?

彼のような状況で、それでも真っ当に自立して生きてる人は沢山いるから、彼は屑だって断言するような話じゃなくて。 私は?って。 観客のあなたは?って問いかけられてる気がした。 私は、私を放置して三波を罵れない。 水は低きに流れるものだから。 奈落の底で両腕を広げて待ち受けていた坂上のところに三波が堕ちていった事に対して、まるで自然の摂理みたいな納得を覚えてしまうのだ。 私もきっと抗えない。 ぬるい泥の中みたいな、居心地悪いけど痛くも辛くもない場所に居座ってしまうと、腰を上げるきっかけなんて掴めそうに無い。 しかも、何回も書くし、出来れば子々孫々まで伝えたいのだけど、飼い主が青柳翔だぜ? 職場で白衣を着ていて、裕福で生活基盤になってくれる、頼めば冷蔵庫からビールを持ってきてもくれる青柳翔だぜ?

薔 薇 色 !!

これ、薔薇色の人生!!!

むーりー!! 抜け出せないー!! 青柳翔がいる人生を五年も送った人間に、青柳翔のいない人生送れるとは思えないー!!! 依存しちゃう!! 青柳翔のいないお部屋に住めなくなっちゃう!

だから、一時の不老不死の高揚の先に三波に待ち受けてる日々は地獄でしょうね。 坂上は、三波の人生の鎖であり毛布でもあったわけですから。 耐えられないでしょう。 社会生活に適合できなかった三波が、不老不死者の過酷な人生を送れるとは思えない。 三波には、坂上が必要なのです。 彼がいないと生きていけない生き物に歪められている。 Mr.Qは三波を坂上程には庇護してくれないでしょう。 彼は、不老不死者となる事でこれまでのクソな人生をリセットして新しい人生を送れると勘違いしてるようでしたが、別に不老不死になったって彼の屑な性根が治った訳でもなし。 いずれ、いや、近いうちに不老不死者になったことを後悔するだろうし、なんで自分ばかりがこんな目にと世を拗ねるでしょうし、こんなことなら死ねるうちに死んでおけばよかったと後悔することでしょう。 だって、もう坂上はいないから。 誰も、彼の存在を必要としなくなっているから。

坂上坂上でいる為に、三波が必要だったように三波が三波でいるためには坂上が必要だった。 その事に気付くまで、多分それ程時間は必要ないのでしょう。 そして、気付いた時には死ねない身体を持て余したまま、失ってしまったものの大きさと、その存在が不在であるせいで抱えることになった空虚さに呆然とする他ないのです。

本郷君、本当にぴったりだった。 華奢で、未成熟に見える姿態も、高めの声も、幼い顔も、くしゃって歪んだみたいにしか笑えない表情も。 他人が自分に述べる言葉全部が敵意にしか聞こえなくなってるハリネズミみたいな態度とか、見るからに成熟した男性が取っていたら滑稽さが勝るだろうところを、彼の成長が止まっているかのような少年めいた姿が妙な不気味さに繋がっていて、35年生きていながら人生経験を殆ど積んでいないだろう幼い言動の強烈な説得力を生んでいた。

私は、自身をも範疇に含んで三波は屑だなぁって罵倒する。 事故に遭わず、坂上が現れないからこそ、今の人生を送ってるだけで、私も同じ状況ならきっと飼われる事を選ぶだろうし、今の人生が三波よりもクソじゃないとか胸を張って言える筈もない。

冒頭で紹介したソフィ・カル。 やっとね、あの長い前置きを、ここで引用させて貰って伏線の回収を果たしたいのだけど、他者の不幸で自分を癒した彼女の過程に「人は他人の不幸で自分を癒せる因果な生き物だ」という実感を得た私にとって、三波が坂上にとってなくてはならない存在であるということに疑いの余地を挟むことは出来なくて、愛ゆえにではなく、情ゆえにではなく、不幸セラピーの為のペット扱いだとしても、無茶な手段を講じてでも捕らえておきたいと願われるほどに他者から必要とされる人生というのは、そんなに悪くないような…って考えてしまう。 そして、こういう思考に至るということこそが、私が屑っていう証明に他ならないんだろうなぁ(諦念)とも気付いているのですよ、ほんとにね。

何しろ、百万回目だけども、青柳翔の顔とスタイルした医者に高級マンションで飼われるとか、やっぱりスペシャルハッピーライフ・ハッピーホームとしか思えないので、そこからきちんと自立しようという気概だけは持っていた三波の事を屑だけど、気持ちだけは偉い屑だなぁと気持ちまで屑な私は賞賛してしまうのです。

そんな「青柳翔推し虐殺兵器」であるところの坂上医師は、もう初回ね、何度も悲鳴をね、喉で押し殺したよね。 みんな叫ばずにいて偉かったよね。 劇場にいた青柳famに尊敬の念しかないわ。

みんな、よく頑張った!! えらいぞ!!! まず劇場に向かった青柳翔famにスタオベしたくなる位、凄い役っていうか、凄い歪んだクレイジーサイコパス屑野郎。 まず見た目が天才。 登場時のスーツも、着替えた後の私服も天才。 恵まれた体躯と整った顔立ちは、裕福な暮らしを送っている事や、世間の信用を集める地位にある事に、さもありなんと頷かせる説得力を付与していて、あまつさえ窮地にある親友を無条件で助けてあげる優しさまで持ち合わせてます!という嘘くささに拍車をターボエンジン搭載で掛けることこの上なしなのよな。

非の打ち所がなくて、いけすかねぇ。

僻み根性の塊であるところの私からすれば、この第一印象から逃れる事は出来ない訳で、嘘でしょ?って位に好人物を演じる青柳さんの爽やかな笑顔も、柔らかな物腰も、穏やかな言葉遣いも全て全て、その時点で「おっと、これはまともに喰らうと、致命傷を負うな」と確信させるに足る素晴らしさだった事も併せてお伝えしたいのです。

青柳翔が素敵な人物像を演じると素敵。 うん、びっくりする位頭の悪い気付きをですね、大声ダイヤモンド決め込みたい。 素敵な青柳さんて、素敵ー!!!!(口の両脇に両手を当てながら) つまり、第一段階で私は充分「死に値する」と慄いていた青柳さんがですよ、第二段階にていよいよその実力を見せ付けてくるわけよ。 エクスデス倒したらネオエクスデスが待ち受けている。 まぁ、そういう青柳さんだったわけよ! 分かる? 分からない? まぁ、私も分からんからな!!(開き直った)

大体覚醒モード坂上は「俺の演技力を見てくれ!」と言わんばかりの狂い咲きサンダーロードを爆走してくれて、基本「芝居の巧い役者が自身の実力を発揮するに足る役を演じている姿を見るのが大好物です」な私は、「え? 急に劇場の酸素濃度低下してない? これ、私息出来てる? ヘモグロビン、仕事して! ちゃんと、酸素を運んで頂戴!」な危篤状態に。

不安定で幼い野放図な喋り方と、傲慢な態度。 腹を刺された三波を膝の上に置く姿は、これほど魂を汚すピエタ像もあるまいてという具合で、マリア!そうか、お前こそマリアだったのか、九十九さん!とか、虚構と虚構を混ぜるな危険!しちまう位には私の正気を奪う威力を誇っていた訳です。

文章のテンションがどうかしてる? だいじょうぶ、だいじょうぶ、青柳さんの酷さに、ちょっとね、頭をおかしくされてるだけだから、もうちょっと語らせてね?

 

だって! 坂上! 膝の上の! 三波の頭をぎゅー!ってするんだもの! 慈しむみたいに、ぎゅーー!するんだもの!!! そんなもん、こっちの心臓はぐしゃー!だわ!!! おかーーさーーーん!!! 助けてーー!!! 青柳さんが酷いよー!!!!

 

ぎゅーの瞬間「ひえ!」って尻がピロティの座席から浮いて、っていうか、覚醒後のハイパー青柳無双タイム中ずっと尻が終演まで浮いてて落ち着く事はなかったのだけど、テンションが乱高下する青柳さんを前にして気持ちを落ち着ける事が出来る人間なぞこの世に存在する筈もないのだよ(悟り)

周囲を蔑み勝ち誇る青柳さん、子供っぽく駄々をこねる青柳さん、父親の事を『パパ』って呼ぶ青柳さん、本郷君に苛立たし気に物を投げつける青柳さん、本郷君の頭をヨシヨシし続ける青柳さん、本郷君を甘ったるい声で心配し励ます青柳さん、「どーも、腕のいい先生です」って自己紹介して飄々と頭をぺこちゃんする青柳さん、場の絶対的支配者として振舞った直後シームレスにヒステリック青柳にメタモルフォーゼして振り返りもせずヤクザな戸次さんに面倒くさげにバイバイし、前野さんの事も徹底的に追い詰める青柳さん…

 

手加減なしな青柳さんの満艦飾具合に「やめて、やめて、殺さないで、まだ死にたくない、せめてハムレット観せて! 青柳さん許して、オッケー、分かった、休憩させて、一旦休憩させて、はぶあぶれいくたいむさせて、キットカットを割る時間を頂戴」と涙目で懇願すれども、当然劇場内でのご飲食はご遠慮くださいと云わんばかりにブレイクスルーされて(語彙もいよいよ混沌として参りました!)、ネオエクスデス倒してもオメガとか神龍とか、更なる強敵が待ち受けてるんですよ!とばかりの最終段階青柳がやってくるわけなのよね!(FF5世代の人に向けて)

 

うん、ここまで付いてきてくれてる人いますかー?!(太平洋一人ぼっちフェイスで) まぁ、もう、一人ぼっちでもいいよ!

最後の青柳さんは、こちらも観た人間全員沼に漬け込むマンなMr.Q演じる吉沢さんに「坊ちゃん」呼ばわりされながら、本郷君に頚動脈を切られ、血みどろになり、床を長い手足を投げ出して這い蹲り、惨めに命乞いをして、馬鹿にしていた連中に見下され、追い詰められながら惨めな死に様を晒すというラストに至る訳でして、この一連の流れにもう感極まりすぎて、許されるのなら「鍋ーーーーー!!!!」って一々大向こうを送りたくなったもの。

 

うん、意味が分からないのだけど、そもそも此処に至るまで意味が分かるような感想文を書けてる気がビタ一しねぇから、圧して参る!の精神で書き続けると、鍋といえば坂上と断言したい程に、冒頭最大の見せ場でもある坂上屈指の力強い名台詞を事あるごとに送りたいというね、そういう気持ちをこめて、合いの手として送りたい。 ブラボーの替わりに送りたい。 私の末期の台詞も鍋でいい。 うん、それはいやだ。(即引き返せる臨機応変さをアピール)

 

青柳さんの屋号が「鍋」とかそんな訳ないのだけども。

まず、もう血みどろでふらつきながら登場した瞬間に「待ってました! 鍋!」って言いたいし、引き攣った声で「死にたくない」と言い出した瞬間にも「よっ! 鍋!! 名調子!!」って叫びたい。 ピストルで躊躇無く三人を撃ち抜く姿も、不老不死者の面々を化け物呼ばわりしながらMr.Qの腕に縋りついて血を啜るとこも、みっともなさを手加減なく演じきる青柳さんの全てに私は唸りに唸ったし、その末路に待ち受けていた自身の頭を顎下から撃ち抜き吹っ飛ぶ様に、えもいわれぬ爽快感とカタルシスを覚えて、私は「鍋…っ!」と感極まりつつ、無事解脱の心境にまで至ってしまった。(あと、とどめに千秋楽公演にて特効の銀テが飛んだ瞬間、ひょん!ってびっくりして飛び上がる姿に追い討ちを喰らった)

 

作り手が意欲をもって相当にホンを練り、自身のプランニングにより沢山の協力者を得て、大事に大事に作り上げた舞台を観客が敬意と歓びをもって観劇するという事は、とても健全で幸福で真っ当な観劇体験だと私は思う。 正直にいって、この健全さを今の舞台演劇界隈で享受する事はかなり難しい。

戸次さんにとって、宝物のように大事であろうソロプロジェクトの舞台に青柳さんが出演した事は、そのことを切っ掛けにMMを観劇した私にとっては幸福な観劇体験を得る結果に繋がりました。 本当に感謝しかない。 そして、MMへの出演が青柳さん自身にとっても幸福で得ることの多い経験になっていたなら、私は勝手にだけど更に嬉しく思うのです。

 

前野さんはなんてったって声が! いや、今回の出演者みんな声がよろしいのだけども(余談ですが、映像仕事割合の方が多い役者ばっか揃えて、あれだけ無茶な喉の使い方させてるのに誰も声を枯らしていない事には素直に驚き。 強い! みんな喉が強い!)、前野さんは特に聞き取り易く、緩急のつけ方、感情表現の技術等台詞の扱い方の巧さに唸り倒した。

喉がとっても高性能!

 

MMの役は全員、役者として演じるに面白いばかりであろうと瞠目する程に巧いキャラクター設定になっているのですが、今野は兎に角ずっとテンションアゲアゲつうか、ダウナーになるとこ一切見せない操状態キャラなので、体力の消耗具合も事の外凄かろうと慮ったりみたり。 パニック状態になるとことか、情緒が壊れた際の一本調子に明るいばかりの声とかが、ホラー映画のジャンルでいうとチャッキーとかシャイニングに通じるハイテンションホラーな味わいもあって、お調子者で立ち直りが早くメンタルがどうかしてる癖に小市民的発想から逃れられないトコとかも、人間らしいような怪物めいているような取り留めのなさが最高だった。 不老不死者を前にして「借金、返さなきゃ!」を行動指針にし続けてるのとか、本当に気が狂ってるとしか思えないし、逆に「借金」が彼の人生にどれだけの影を落としているか考えも及ぼうってな感じで、そりゃ妻に見捨てられて可愛い子供にも会わせてもらえないんじゃ情緒は壊れるよな…と納得後、その事を坂上が知らないのは、友達としても主治医と患者としても信頼関係築けてないってことじゃん!とか思わずにはいられないわけで。

今野、これで友達もいなかったら、四人の中でも相当にしんどい立場だわな。

三波にマウント取る事で、今野も精神の安寧を得てたんだろうなぁ。

それでいて今野には余り悲壮さがないのは、あの張りのある声が萎れることが一度だってないからだろうなぁと思う。 口を開けばずっと、お祭り騒ぎ!みたいな印象じゃない? 今野って。

多分、坂上精神科医としてもポンコツだろうから、今野のことを欝だと診断したけれども、あいつ躁鬱だぜ? きっとだけど。 んで、舞台上での時期はきっと躁時期だぜ? でないと、あのテンションの説明付かないもの! 苛烈な暴力奮われた相手に屈託無く接したり、自分が殺そうとした相手に媚びたりする精神の有様とか、神経の大事な何処かが麻痺してるとしか思えない。 欝病であった頃が想像出来ない程の初登場時のテンションとか無神経な言動見てると、別の病症が出てるのでは?と考えずにはいられなくって、そういや原田宗典さんのエッセイって、今野のテンションに通じる文体だもんなとか、私が唯一知ってる躁鬱病患者さんであるが為にアツい風評被害にまで及ばせてしまった事を原田先生に陳謝しつつ、怖面白いというある意味MMのサスペンスコメディの根幹を担うようなキャラを自身の資質をフルに生かして演じていた前野さん、すげぇなぁ!と絶賛の声が私の中で止まないままなのです。

 

戸次さんは、演出を請け負って脚本書いて、色んな差配をやってのけた挙句にあのボリュームの台詞と段取りをこなしてみせた訳で、もうシンプルに化け物だよねと怯えるしかない! 彼のどこが残念なのか? 男前なのに残念だから、残念呼ばわりならばもう、残念を返上して男前だけになればいい。 そして、ファンは子男前になればいい、うん、呼びにくいよ!!

だって、あいつ立ち回りだってあったぜ? マルチタスクの権化じゃねぇか! それともチームナックスって、戸次さんみたいな化け物ばかりなわけ?

私がヤクザ映画が大好きで、虚構の暴力を三度の飯より好み、都市伝説めいた人体売買や臓器ビジネス物語なんかを好んで摂取する人間なので、あのふわっとしてるけど怖い世界に所属してるアウトローだぞ!という事を明確に表明してくれる桐谷の台詞は一々性癖に刺さって仕方がなかった。

こういう作品はどんどん上演されてって欲しいし、ソロプロジェクトにてこういった手合いの舞台を作るという事は、多少私と趣味を同じくする人なのですか?!とか戸次さんに詰め寄りたくなったのよさ。

肝臓取るの、取らないの、取られた人間みんな死んでるだの、とても不穏でにこにこしちゃう。 戸次さんはとてもお顔が整ってるから、必然インテリヤクザ臭もして(武闘派一辺倒では、今の時代若頭補佐まで登れないでしょうし)このMMって、オタクの女の子が考える大好きなものばかりが集められてるのね!なんて、両手頬杖ついて星空見上げながら夢見る瞳で言いたくなっちゃう位、闇のオタク女子(つまり私のこと)が好きなものの集合体であることを思い知りました。

カテコまで、お客に呼ばれて出てくる度にお喋りしてくれて、「大阪は欲しがり」とか言うてたけど、違うんやで?

一般的なカテコって、出てくる度に喋ったりとかせぇへんのやで? 戸次さん、多分何より「冒頭アニメに声入れしてくれたのは、ナックスのアカデミー賞俳優大泉洋やで! ノーギャラやで!」って事をお知らせしたかっただろうに、そこからもう、漫談かな?という具合のトークトゥーミーの会を繰り広げてくれて、何もそこまで頑張らなくても!!とお伝えしたい気持ちになりつつ(そのかわりに気軽に拍手し続けるし、トリプル、クワッドまでいく事もザラなので早くバラしたいスタッフさんからすると、どっちがいいのかは分からんよね。 客は喋ってくれるの嬉しいけど、でもなぁ! 芝居によっては余韻が、ほんと消えちゃうのも惜しいしなぁ)色んな意味で観客に対するサービス精神の塊だなって、制作者側の戸次さんに対して感心する他ないのでした。

 

組織の中では若手を顎で使える位の幹部で、他人の命の取り扱いが雑で思いやりや親切心は持ち合わせてないけど、コミニケーション能力が五人の中では一番高いところや、商売柄「二度言わせるな」が決まり文句な位舐められる事を厭い、粗暴で野卑だけど、どこか間抜けで愛嬌のあるとか、属性バランスが凄すぎてキャラクター造詣が巧いよなぁって感じるわけです。 彼の言動や振る舞いによって、五人の間に一切の情が通うことのない、利害関係のみで結ばれた交流であることを観客は逐一思い知らされ続け、その緊張感こそがMMの面白さの肝だったんだよなとしみじみ思い返しちゃうんだよね。 人は、虚構の物語に対してですら、エモーションを求めて人と人との間に気持ちが通い合う瞬間を切望しがちだし、些細なやり取りにすら優しい名前のついた感情を見出して気持ちを楽にさせたがるところがあるから、「そんなもん微塵もねぇよ」って観客に言い聞かせてくれる、アウトローな存在が物語の手綱を握り続けてくれていたのは上手なやり口だなって感心する。 状況次第であっけなく殺し合える関係性だからこそ、MMの五人のやり取りの結末が見通せず、痺れる位に楽しかったのだから、全く桐谷の存在はありがたい限りだし、戸次さんが桐谷を演じることはある意味必然だったなんて思うのでした。

 

さて、レディース&ジェントルメン。 とりあえず、この時点で9700字をこの感想に費やしている事にゾッとして欲しいし、実際私はゾッとしている。 どうだろう? 他人が書いた頭がどうかしてるとしか思えない芝居感想1万字以上読む忍耐力って、果たして人類に与えられているのだろうか?と不安になりながら、最後に感想書きたいキャラがMr.Qとかなので、文字数は無限に費やしたいし、もう本当に申し訳ない限りなんだけど、まぁ、好きですわ。 こんなん好きですわ。 Mr.Qなんか「嫌いな人いないでしょ?」の戸次さんのドヤ顔しか目に浮かばんやつですわ。

 

うん、そうね! その通りだよね!

 

実質と言うか、間違いなくこの男がこの舞台の主演でしょ? カテコの並びで真ん中だったのも、そういうことかなって勝手に思ってる。 吉沢悠さんに関しては、演技力が異常というのは既に思い知っていました。 JINの田之助とか怖気を奮うほどに凄くって、なんて良い役者さんだろうって感嘆させれれた。

 

癖のない善良さも十八番だけど、癖が強い異常も軽々と演じてみせる役者さんなので、調子外れな口調のコントロールが本当に巧くて、Mr.Qは何もかもが吉沢さんの本領発揮祭りなキャラだなぁって確信すると共に、不老不死者で役者の本領発揮する吉沢さんマジ吉沢さん…って惚れ惚れしちゃった

 

ぶっちゃけ、キャラとして強すぎる! 人間がうっかり世俗で二百年生きて、しかもこの先だって終わりのない人生が待ち受けてる絶望漬けの日々は、人間性をこんなに歪ませ、ズらし、テンポすら変えてしまうんですよ?って、全身全霊で見せ付けてきた。

戸次さんが漫画みたいな世界観を今回の舞台で打ち出してますとパンフで述べてた通り、ほんまに徹頭徹尾漫画の世界の生き物でしかない。

LDHの民に向けて紹介するなら「Mr.Qはハイローのジェシーです」ってやつや

登場した瞬間に、ガトリングをぶっ放すが如く劇場のオンナ共を一網打尽にしてみせた魔性のキャラクター・ジェシーは、NAOTOさんの戦略に対し「卑怯だ!」と震えながら述べるしか私に為す術を残してくれませんでしたが、Mr.Qも同様に大量虐殺兵器と呼ぶに相応しい威力をもって、劇場に女達の死体の山を築いた気がしてなりません。 その死体の山のうちの一人としてMr.Qを眺めても、死屍累々に対し涼しい顔して片眉を上げ、「おやぁ? どうしたんですか?」とか帽子のつばをひょいと人差し指で持ち上げながら素っ頓狂な声で問いかけてくる姿しか思い浮かばないし、どうかその位の人間性のなさを見せ付けて欲しいと祈っているわけなのですが、坂上は、青柳翔famに特に刺さるだろうけど、Mr.Qは誰彼構わず無差別に殺しにくるキャラとしか思えないから殺しの天才の名は伊達じゃねぇなと唸らされました。

しかも、鍋のアクを掬うのが好き❤とか、あざと可愛さまでぶっこみやがって!!

もう、いいじゃない! そんなに設定の満漢全席にしてくれなくてもいいじゃない!

大好き!!!

 

私は前々楽公演と千秋楽拝見したのですが、前々楽はね吉沢さん結構致命的な台詞すっ飛ばしをやりかけて、大層焦ってらっしゃる姿を見せてしまったので、私も少しばかりは落ち着いていられたのよ。

すなわち、ああ、あの人は吉沢さんであってMr.Qではないと。

素が出ちまうってのが、致命傷になるキャラですしね。

まぁ、吉沢さんのご苦労を思えば、多少のトチりが出る日もそりゃ、あらぁな!ってな難役ではあるんですけどね。

だって、どう考えても「戸次さんは吉沢さんに親でも殺されたの?」っつう位の、台詞量と段取りでしょ?

加えて、あのキャラで、あの喋り口調を延々貫かせるのも、相当キツいよ?

むしろ、焼かれた? 戸次さん村、吉沢さんに焼かれたの?ていうレベルの仕打ち。

そもそもパンフでブリ鍋食べてる初顔あわせ時点で台詞量多すぎという事に言及してるのに、更にMr.Qの妻子の話まで追徴課税を課したと千秋楽カテコで語っていて、戸次さんが顔がいい鬼にしか思えんと肝が凍死寸前に。 いや、淀みのない長台詞が見せ場の役とか薮原検校に代表されるみたいに、ない事はないんだけど、Mr.Qは人間離れした佇まいであるが為に、滑らかに語られる長い台詞は当然みたいな役なので、どう考えても尋常でない実力が入り用になってくるキャラなのよね。

 

それでも、千秋楽は凄かった。 台詞の全部を昇華させて置いていこうとしてたと仰ってた通りに、Mr.QはMr.Qでしかなくなっていた。

 

恐ろしい事に、吉沢さんカテコでもMr.Qのままでいらして、タマが一発2000円(!)もする銃を戸次さんが役の上では撃てなかったから最後に撃たせてあげようと提案して、前野さんと決闘を執り行うことになるや否や、三つ数えながら三歩離れてからの早撃ち勝負なんてルールを無視しての傍若無人

何せ、200年以上生きてる不老不死の男なので無法者であることこそが当たり前。 一歩歩くやくるりと振り返り、あえかな笑みを唇に浮かべつつ、前野さんが振り返るのを待ってズドンと撃ち込む姿に見事私は心臓を撃ち抜かれ「待ってたわ! あなたがMr.Qね?」と胸を押さえながら、賞賛の気持ちをこめて断末魔の喝采をあげるしか出来なくなっていたってわけです。

 

不老不死者の集落では「弱さ」ゆえに暮らせなかったというMr.Q

人の傍で暮らすことで、昇華から逃れようと足掻き続ける事にしたなんて聞くと「よりよく生きる」事への執着を手放せないようで、人間性の全てを失ったからこそ至る昇華を惨いものだと認識してること自体、彼の口から語られる彼の主観そのものな表現だった訳だけど、どうなんだろうな?

何も感じなくなるという状態は、その様を見ているものからすれば無惨であったとしても、本人はどうなんだろうな? 行き止まりの先の袋小路みたいな末路だけど、植物人間のようになってしまうという事ならば本人は何も感じなくなるわけだし、或いはその選択が生きる苦痛よりもマシになる時が来るのかもしれないなぁと思うのです。

 

彼が同志とした選りすぐりの屑三人。 あの後、Mr.Qの思惑通り彼らは合流するとして、その後どこまでMr.Qと共に生きてくれるんでしょうね? 終わりの見えない命の果てに、また、Mr.Q一人を取り残して三人共昇華してしまう日がくるんじゃないのかしら? 既に、三波に仲間意識のようなものが芽生えていたMr.Qが、もっと寂しくなってしまう未来が待ち受けているんじゃないのかしら?

それでも、きっとMr.Qは昇華を拒むんだろうなぁ。

Mr.Qは倫理観は磨耗してるし、フィジカルもメンタルも怪物と呼ぶに相応しい男なのですが、同時にどう考えても高潔な男でもあって、愛する人と永遠に寄り添いあって生きるという自分勝手な選択をしなかった。 愛しい妻を見送り、後に自らの名とする程に愛した娘も人間としての死を迎えさせた。 相当な克己心と、忍耐力がなければ出来ない事だ。 もしかしたら、彼女達の方から「一緒に永遠を生きましょうか?」という提案があったかもしれない。(ただ、観劇後のMM感想を語りつくそう打ち上げにおいて、お友達がバター醤油焼き枝豆をつまみながら「昇華のアニメーションとか、男しかいないみたいだったし、女は不老不死者になれない可能性もある」と言ってて、なるほど! その可能性もあるな…とは思った)

特に、ずっと老いない父に寄り添う人生を選んだ娘なら、余計に父にそう願ったこともあるだろう。 それでも、彼が本当に大事な人を不老不死にしなかったのは、真実相手を愛していたからで、私はMr.Qが「愛情」と「執着」の区別をきちんとつけられる男であったという時点で、もう、なんて誇り高い!と慄いちゃうのです。

そりゃあ、耐え難いでしょうよ。 そんな男に、土に還る事も出来ず唯々諾々と横たわり続けるだけの昇華がもたらす惨めな姿は。 目の当たりにすれば、ああなりたくねぇ!って怖くなるのは必然でしょう。 そして、誰も彼も彼ほど誇り高くなかったのだ。 だから、彼はたった一人、不老不死者としても取り残された。

 

坂上は、敵うはずないのよね。 人間としての器も違ったんだから。 「はい、坊ちゃま!」なんて全部聞いてる間、自分が三波をそう取り扱ったように「ペット」扱いされてたなんて全然気付かない大間抜け。

まぁ、自分の浅ましさを糧に怪物が生き永らえていたなんて、想像できるはずもないのだけど。 あんなに何もかもに恵まれていたのに彼女を作ることすら諦めてた彼は、人を愛さない替わりに自身の自尊心を満たす相手に執着して、自身の空虚を埋めていた。 Mr.Qは高潔な男だから、そして倫理観のない男だから、大事に思わなくて済む相手ばかりを「永遠」に連れてくことにしたんだろう。

坂上だけを置いて。

 

死の淵で命乞いをする坊ちゃんに慇懃無礼な態度で接するMr.Qを見て思った。 坂上は生贄だったんだなぁって。 Mr.Qの。 食物連鎖の頂点にMr.Qは立っていて人間はいいように喰われるしかない。 Mr.Qは坂上の骨までしゃぶって、その味に飽きたから、きっと呆気なくさよならしたのだろう。 それでも、「いけすかなかったんですよねぇ」って嗤うMr.Qの嘲る声は本当に愉しげで、こんなに強くて美しい不老不死者に最期の最期まで遊んでもらえて良かったねって、坂上のことを羨ましく思うし、私がMr.Qを目の前にしたならば、どうか表情一つ変えずに心臓を撃って欲しいという欲望を抱いてしまう。

つくづく、ああいう手合いの怪物は、厨二病的破滅願望を掻き立ててくるから堪らんばい。

しかし、願わくばあと一回位は観劇したかったなぁ! 映像化は、ほんと心からお願いしたいし、もし私が石油王なら戸次さんが指定する北海道内の市町村にしこたまふるさと納税キめこむので、MMを同キャストで続編を! 

ほら、お友達とも喋ってたんだけど、坂上を実は先天的不老不死者だったって事にして、あの後蘇らせてさぁ、同じメンツでその後の血みどろで裏切りあい、出し抜きあうような不穏な続編を!と願い出るし、それが無理ならせめて、あの素晴らしいMr.Qの物語をシリーズ化して、ずっと吉沢さんに演じていただいて色んな時代に生きるMr.Qの物語を見せてくれませんか?!とか祈ってやまない私がいるのです。

もし、そんな夢が実現したなら、北海道だけの限定公演になったとしても北の試される大地に飛ぶぜ!

早割りでな!

だから、なるはやでお知らせしてくれよな!

あーん! もうその位、Mr.Qに会いたいよー! そして、また見事に心臓を撃ち抜いて欲しいんだよー!!!

畜生! 私に油田があれば!と歯噛みしつつ、私はこれから吉沢悠出演の過去作と、坂上とのギャップで風邪を引くべく、ハイローの九十九さんを見返すのに忙しいのでこれにて失礼させて貰うね!

ちな、ここまでの文字数は15500字に到達しているので、ここまで読んで下さった方に感謝の念を捧げると共に、こんなすっとこどっこいな感想を長時間読むなんていう時間の無駄遣いが出来るなんて、まさか、あなた不老不死者じゃないの?!って疑いの気持ちを抱かせて下さい。

 

じゃ、そろそろこの辺で、アデュー!!