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JAM -the drama-  第1話感想

すごいものを見た

jamドラマの第一話の感想です。
私は始まって3分くらいの地点で「助けて」って声に出して言っていた。
何しろ、お久しぶり!の横山田ヒロシが世紀末の世界で、名優・千葉哲也さんにブルーバードを呼ぶ歌声の持ち主として命を狙われているのである。
この時点で百万回の「なんて?」を贈りたいのだけど、次の瞬間にはヒロシはロカビリースタイルで歌謡曲を歌い踊っており私の「なんて?」は空中に消えた。
答えは返ってくる筈もなく、瞬きする度に場面が目まぐるしく変わっている。
世界で一番縁がないでしょ?というような場末の酒場で三代目JSBのお洒落番長NAOTOさんが「生まれた時から着てました?」てな位にお似合いあそばす作業服で酔い潰れてる姿には「ドームで踊ってんのこちとらフラッグ振りながら生で見てんだよ!!!」と訴えたくなるけど、もう「ダンシング・マリー楽しみにしてます!」しか伝える心の余裕はない。
何しろ、テレビ画面にはラップで武道館を沸かせるSWAYが、かの名曲「MASAKO」を熱唱しているのである。
似合う…似合うわ…お着物。 凄いガタイの良い、滅茶苦茶顔面の強い、派手な髪色の演歌歌手って一度沼ったら他では満足できなくなる位の癖の強さだけど、私ホール会場でタカシの団扇振りに行っちゃう気がしてならないわ。
しかも、後々分かるのだけど、映画では台詞の少なさのせいで察せられませんでしたが、この子相当なおバカさんですよね?
可愛い感じのおバカさんですよね?
純粋なおバカさんですよね?
これ、ちょっと載せ過ぎじゃないですか?
すぅえーどんの厚い胸板に夢を載せすぎじゃないですか?
タカシのキャラ、サービスが凄すぎて、これで昔ヒロシと恋人関係にあったっていう設定生きてたら私が観測できる一体が焦土と化す予感しかないのですけど、SABU監督には大量虐殺の覚悟はあるのでしょうか??
まぁ、ヒロシがね! 暴力の嵐に見舞われて(SABU組お抱えの組員は佇まいが全員気合入ってて素晴らしい。安っぽさが皆無。つまり暴力の密度がガチっぽくて痺れる)「すいません! すいません!」って地べた這いずって謝ってる姿を見た時点で「ありがとうございます」と、既に天を仰いで礼を述べた私ではあるんですけどね!

そんなヒロシと対照的に映画では「これで死んでなきゃ、もう不死身って結論以外出せないんですけど?」って姿で登場場面を終えたテツオが全力で生きてて、ていうか「生きてますけど、何か?」っていう風情で生きてて、いや、そんな風に生きていられたら私も「じゃあ、不死身って事で納得しておきます」としか言えないし、テツオのおじいちゃんも生きてるし、ドラマだとロケ地違うみたいだけど北九州市の住人みんなこんななの? 冒頭のオープニングでヒロシが言ってた荒れ果てた世界って北九州市の別名?と、もう怯えるしかなくなりまして(北九州市への熱い風評被害)
海で流されて、三年泥棒と暮らして、その泥棒が死んだらアガリをガメて妻のところへ帰ってくるじいちゃんと、そんなじいちゃんを明らかに映画jamでは認知症発症してたのに夫の無事を確認した途端シャンとして盗んだ金で海外旅行いっちゃうおばあちゃん見てると、テツオの不死身設定も、暴力がコミニケーションツールなところも血のせいかな?と納得を覚えるしかないのですが(?)
まぁ、そんなテツオが恋に落ちる事は事前情報で分かっていて、のぶの凄いところは表情だけで「ああ、人を好きになったんだな」って思い知らせてくれる表現力だし、その瞬間いっぺんにテツオの表情が可愛くなって、あどけなくなって、見てる世界が一気に様変わりした瞬間の人間の様子を見てるみたいで、とても好ましくって、そんな風に唐突にテツオの小さな恋が始まって「この恋も主軸に一つとして物語が展開してくのかな?」と察した瞬間に恋は終わったんですけど。(いや、ラリアちゃんのデート相手お兄ちゃんだったから、真実を知った時からまたテツオの恋は続くわけですが、それにしたって失恋までのインターバルが短い)

もうね、びっくりした。
わたし、びっくりした。
このドラマ、そもそもびっくりさせ過ぎなんだけど、まぁ、テツオの恋の物語の起承転結の早さもすっごいびっくりしたよね?
テツオが恋に落ちて、暴力ふるって、指輪買って(怖い!素直に怖い!思いつめる速度の速さが怖い!)、オシャレして、失恋して、ヤクザにノされて、ヤクザに拾われて、また暴力ふるうまで10分もないの。
時間、10分もかかってないの。
そして、BGMが「舟歌
もう、前代未聞。
舟歌バックの暴力&失恋は聞いた事ないし見た事ないし、多分これからもない。
この世で一つの宝物という意味ではワンピースに匹敵する(何言ってるか分からないゾーンに入って参りました)
LDHコンテンツ名物として、エモーショナルな歌と共にお送りされる暴力には慣れっこな私ですが、斬新すぎて演歌バックの暴力の時代がこれから来るぞ!と一瞬勘違いしたし「いや、これを見られるのは劇団EXILE総出演コンテンツだけだな」ってすぐに正気を取り戻しちゃった。
ていうか、ヒロシといいこの町では道に倒れてたら、顔の良いヤクザに拾われなきゃならんオキテでもあんのか?
拾う方も拾う方で、刺しましたよね? 世良さん、テツオのこと刺しましたよね? その上で死を確信したから放置したんですよね?とかは思うのですが、あすこまでやって生きてんなら、もうケジメはつけたと見做してんのか、どっこい生きてるような生命力の持ち主(しかも天性の暴力装置)は組にとっては最高の逸材だと見込んだのか?
私、jamの世良のSABU組ヤクザの中においても際立つ存在感とか異質な怖さが大好きなのですが、その印象を裏切らない危うい度量の見せ方が凄く色っぽくて「ふぉ~」と溜息漏れちゃいました。
世良が笑いながらテツオを刺すとこ、また見たくなっちゃった。
だって、この展開を得て、あの場面って滅茶苦茶エモくなっちゃったもんな。
この世良の「うちに来るか?」の一言の説得力で「ああ、そういう世界だ」って納得したし、テツオが暴力を振るう姿を笑いながら「見守る」(世良の眺め方って、見守る眺め方なんですよね)佇まいに惚れてしまいました。
滝口の面白がり方も「うっめぇなぁ!」っていう面白がり方で、最高じゃなかったです?
私、アーカイブで滝口がテツオが暴れてる姿を笑って見てるとこ何回も見返したんですけど、本当に巧いの。
短い出番で、滅茶苦茶巧い役者なの思い知らせてくれるのが小野塚勇人の凄みだし、醍醐味だなって再確認したわ。
世良と滝口についていくテツオの少しでも優しくされたら心を奪われてしまう孤独感の補強もされて「舟歌」からテツオが拾われるまでの一連のシーンの無駄のなさと説得力と役者の凄みのバランス、とんでもないし、SABU監督の凄さも改めて実感させられました。

 

一方その頃、タケルはタケルで前回の時点で顔の良さを凌駕する気持ち悪さで名を馳せてたけど、今回もベンチに座ってMASAKOとヒロシとの地獄の3ショットを見せての会話シーンは「ホラー映画なら事前にホラー映画と告知しといてくれ!」の怖さでしたね!
「これってもしかして、(俺たち・私たち)、入れ替わってるー!?」って左右の膝が何度か入れ替わりそうな位震えてぶつかったっつうの。
そもそも、タケルってばヒロシを拾うの二度目だし、二度もヒロシを拾えるとか運がいいね!ってちょっと羨んだんですけど、二度目にしてもう慣れっこ感出てる辺りが既に怖いのよな。
加えて、病院でのヒロシとのやり取りがずっと絶妙にコワ面白いんですよね。
量子学的に少しだけ選択肢が違って派生した別世界の同士で喋ってるみたいな噛み合わなさ。
オオストーンラリアのくだりとか、よく笑わずに演じ切ったと二人を褒めたい具合で、私jamドラ第一話を布教する時が来たら多分このシーン見せるだろうなって決心してます(理屈抜きで面白いから)
タケルの回想シーンも、タケルが恋人だと言い張ってる彼女、本当にお付き合いしてる相手ですか?の謎は残っちゃいましたもんね。
なにしろタケルの目が怖くて、怖くて。
あんな目をする男と真っ当なお付き合いが出来る相手って、それはそれで怖い人って事にならない?って考えこんじゃう位怖い目してる。

なんでしょうね?
あの目の温度感というか、色合いというか、とにかく表情込みで凄い怖いの。
執着の塊みたいな目をして彼女を見ていて「長い眠りから目が覚めたら、見知らぬ顔が国宝級にいい男が私の事を恋人とか言い張ってるんだけど、その人の正体は実はヤのつく組合の若頭で、これから私どうなっちゃうの~???」みたいな、月9ドラマにだってなりそうな展開なのに、タケルの目が「そういう物語じゃないからね?」って、私に言い聞かせてくるの。
なんか、先行配信御覧になった方々からタケルに関しては断末魔みたいな感想が漏れ聞こえてくるし、これはもう覚悟を決めるしかないぞ?と、震え上がりながらタケルのこれからに期待しときますね。

しかし、ヒロシも青柳さん・お町田さんの事前対談でお知らせ頂いた通り相変わらず主体性なく、虚ろで、流されるまま、抗う事無く落ちぶれていて、青柳さんの落ちぶれって、青柳さん独特の凄みがあるんだよなとか私は感心しました。
しかも落ちぶれのパターンが豊富。
おのちゃの事、苛立ちの表現の百貨店やで~!と私は常日頃から感じてるんですけど、青柳さんは落ちぶれっていうかダウナーなテンションの表現が凄すぎて、おのちゃの「苛立ち」表現と並ぶ、青柳さんにとっての役者として武器だよなって感じ入りました。

まぁ、そんなヒロシが空っぽのまま魔女MASAKOの導きでガラスの靴を履かされて、シンデレラの如く階段を駆け上がるのか、二人で地獄の業火に炙られる事になるのかは全く分からんのやけど、MASAKOロケットでヒロシの胸に飛び込む姿を見て私を泣かせた彼女が、とうとう名実ともに、誰も文句のつけようもないトップオタとなった訳で、その事だけはなんかスペシャルハッピーだなぁって思う私と、滅茶苦茶怖いやんけ!と気付かずにいられない私もいるんですよね。
MASAKOみたいな女がトップオタになっちゃうのは、やっぱ不味いんだよな、倫理的にもって冷静な私は判断してるので、SABU監督はどうやってMASAKOを始末するのか?という視点からも楽しみにしたいなって思っております。
何しろ、MASAKOのMASAKO無双も相変わらず健在で、車椅子が一定のリズムを刻んでベンチにぶつかる音も、MASAKOスープ(改)の即効性の威力の恐ろしさもさることながら彼女がこの先、どのような暴走を見せるのか? ヒロシへの執念を貫けるのか?も怖がりながら、楽しみにして来週を待とうと思うし、私の喉から「助けて」を絞り出させた奇想天外な第1話オープニングがただ監督が青柳翔で遊びたかっただけなのか、何かの伏線になっているのか?(なってたら、私はやっぱり物凄いびっくりする)も、油断せずに最終話まで見届けようと思います。(あと予告の彼女に血塗れにされるタケルの横顔が怖美し過ぎたので、あの姿を本編で見るまでは絶対に生きる覚悟も決めてます)

 

映画のjam感想文にも書いたど、SABU監督作品でしか得られない爽やかさの一切ない疾走感を物凄く浴びられる第1話の事、私は最高の最高に大好きだぜ!と嬉しくて仕方がなくなってしまったので、最後まで見てる人間が誰一人として追いつけないような速度で駆け抜けて欲しいと願っております。