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西荻窪 三ツ星洋酒堂 第三話 感想文

笑の大学というお芝居に出演している姿を映像で観て以来、最早御尊敬しておりますと申し上げたい程に、近藤芳正さんは私にとって絶大なる信頼を寄せる役者さんの一人となっています。

今回のにしぼし第三話ゲストで来られるとの事で、もうね、身構えてすらいましたし、身構えている以上に「あー…」みたいな「巧ぇなぁ…」ってしみじみ感じ入ってしまうような、そういう実力を見せつけて頂いて、巧い役者って巧いよなぁ(語彙)って改めて実感している次第です。

チョコレートケーキにお酒を合わせるだなんて、お酒のアテで一番好きなのは油揚げを焼いてネギとかつおぶしを山ほど乗せてお醤油垂らしたヤツです!!と大声で自己紹介する私からすれば、そういうシステムでも搭載されてるかのように「へっ!」と半笑いの声が自動的に漏れ出そうなものですが、そのお洒落の権化の如き組み合わせを口にするのが定年退職を迎えた壮年の男性というギャップと、あまりに切ないエピソードに加え、夫婦で過ごしてきた長い年月を背景に感じさせてくれるような近藤さんの絶品芝居があわさって、三話目にして多分、今回のお話が私にしぼしにおいて一番好きな話になるんじゃなかろうか?と確信させる程に素敵な時間を過ごさせて貰いました。

こういうの!

深夜にお酒と缶詰を用意して見たいのは、こういう話!

あえて誤解を招きそうな表現をしてしまうんですけど、深夜帯に見る30分ドラマって視聴後に深く考えさせられたくないんですよね。

あくまで、私は!ですけどね?

穏やかに眠らせてくれ。

なんかいい気分でベッドに入らせてくれ。

見た後にすぐ忘れちゃう位のコメディとか、テレ東の専売特許である食べ物ドラマとか、今回みたいに静かにそっと見てる人間の気持に寄り添ってくれるような切ないけど優しいお話なんかが寝る前にお酒なんか飲みながら見るドラマには適してるように私は思うんです。

心を激しく揺さぶって欲しいんじゃなくて、ゆりかごに入れてそっと揺らしてくれるみたいな、今回はそういう話だったように思えて「いいもん見たな」って満足しながら、私は眠りにつけました。

 

とはいえ!!

 

推しのビジュアルは今回も唸りに唸っておりまして。

雨宮役やってると衣装が身体のライン如実に出る仕様のせいか、腰の位置の高さが「肋骨の本数、一般的な本数よか少なくないとその位置成立しなくない?」って震え上がるし「そんなに細い腰で自立出来てるのウェアラブルな仕組みに補助して貰ってるの?」とか不思議に思っちゃうんですけど、どの瞬間に見ても「時よとまれ! 汝は美しい!」ってファウストになっちゃうような状態を維持してくれていて、奇跡みたいに綺麗な人だなって手放しでこんなに容姿を褒められる人、私他に知らんな…って見惚れるしか出来なくなりましたね。

 

特に、前半のサプライズバースデーの準備にニコニコうきうきしてる雨宮が、古本屋の御主人に声を潜めるように指示されて戸惑ったように唇の前に人差し指を翳す仕草とか「フォトブックのポスターのポーズはこれがいいです! もしくは特典のポストカードにしてくれてもいいです! いっそのこと額縁にいれて飾りたいです!! LDHはいい加減、劇団のカレンダーを売ってくれ下さい!!!(脱線強欲)」と懇願したくなる『美!』具合だったと思いませんか?

 笑みを含んだ声で勝手に中内と小林を手伝いに巻き込み、用意するものまで指定する柔らか強引な手腕を発揮する雨宮と、雨宮に言われると不満を顔に浮かべつつも従ってくれる甘やかし中内&小林のトリオな関係性も三話目にして確立されてきましたし、えーーん!六話で終わるとか言わないでくれよー!!とか、大人なのにその場で地団駄踏んで口惜しがりつつ、それでも推しが溜息を吐く程に美しく、にしぼし三人組が今回もとても可愛くても、やはり第3話の白眉は近藤さんの一連の芝居全てにあったなって私は思うのです。

 

若い彼らのやり取りに心を解されて、缶詰のケーキを前にぽつりぽつりと雨だれのように妻との思い出を零す近藤さんの静かで、優しい口調は「ああ、奥さんの事をこの人は、本当に大事に想ってるんだな」って確信させてくれて。

チョコケーキの缶詰を手にして、甘いものが好きな奥さんの事を語る時に緩む顔が本当に素晴らしいんですよね。

思わず笑うってこういう顔だなって表情してて。

こんな風に、その人について語ってる時に思わず笑ってしまう相手がいるって素晴らしいことだなって思わせてくれて。

そして、この近藤さんの芝居に相対する私の推し!

私の推しもね! 良かった! 近藤さんは決して人を「喰う」芝居をしない人だという事もあって(そういうとこも信用がおける役者さんだと私は思う)、見劣りの心配なぞはしてなかったのですが、それにしたってよくぞ!と称賛したくなる程に、私の推しの町田啓太とて、素晴らしかったよねー!!って私は訴えたいのですよ!!

フンスフンス!と鼻息を荒くしてるのですよ!

相手の言葉をスルスルと引き出すような、困惑する相手の手を引いて相手の望むように、相手の希望を最大限叶えるように相槌を打ち、提案を行い、暖かくて優しい方へ導くその態度や、口調がね、私にとっては理想のバーテンダーって感じでして。

こういう人に、私も話を聞いて貰いたいし、お酒の提案もして貰いたいとは思うんだけど、いかんせん顔がな~!

顔が町田啓太だもんな~!!

私が喋ってる時間が勿体ないっていうか、顔を見るのに全集中しないといけなくなるのが雨宮のバーテンとしての欠点っちゃあ欠点だよな…と、洋酒堂が本当にあったなら?なんて本気で考え込んでしまう程に、近藤さんと雨宮の遣り取りに感じ入っているのでした。

 

私は、今回のお話では入院した奥さんが大好きなチョコケーキを一口も呑み込めなかった話をした後に「悲しかった。 死んでしまった日よりもずっと」と語る台詞が、とても印象に残っていて。

なんて、寂しくて、悲しくて、本当にそうだよな…って思える台詞なんだろうって胸を突かれてしまって。

失ってしまった時よりも「この人を失ってしまうのだ」と分かりたくないのに理解せざるを得ない瞬間の方が、喪失感はより深いのかもしれないって納得してしまって、だからこそ忘れかけていた奥さんとの優しい約束を思い出せて良かったなぁって心から思えるラストに辿り着けた事、そうやって視てる私の気持も雨宮に導いて貰えた事が、本当に嬉しくてならないのです。

 

ラストも雨宮だけが三人の思い出に一人はしゃぐ姿も可愛かったのですが、お迎えの車に乗り込んで「お坊ちゃま」と呼ばれる雨宮を見て、30歳でお坊ちゃま呼ばわりされる推し、最高では?!と思わずテンションが上がってしまったり。

雨宮の出自とかまで描く気あるなら、やっぱ六話短いよね~!

四話の予告でもう、中内の味覚障害が治りつつあるとか言い出しちゃうしさ!と石ころ蹴って唇を尖らせつつ、次回放送を楽しみに待ちたいと思います。